夏目漱石『それから』(新潮文庫)

「パンに関係した経験は切実かもしれないが、要するに劣等だよ。パンを離れ水を離れた贅沢な経験をしなくちゃ人間の甲斐はない」

「生活上世渡りの経験よりも、復活祭当夜(以前ニコライ堂で見た祭りのこと)の方が、人生に於いて有意義なものと考えている」

「何のために働くのか?」という問題は非常に哲学的で難しい…。

しかし、その答えは千差万別であり、良し悪しは内容に思われます。それゆえ、もしも仮にその答えが、「食うためだ!」と答えられたとしても、それが「劣等だ」と切り捨てることなんて誰にも許されません。もちろん、自分の意見を持つことは大切で、その考えにおいて、「○○と思う!」という議論はされるべきだと思います。

 

sorekara
日本が世界に誇る、明治日本文学の巨匠〈夏目漱石〉は、著書『それから』(新潮文庫ほか)において、「主人公・永井代助」とその親友「平岡」との会話の中で、その問題を読者に問いかけています。

「著書にそう書いてあるから…」を理由に漱石の考えを推定するのはあまりにも安直ですので、“ある一面として”紹介しますが…
上に紹介した「代助」の言葉を見て頂けばわかる通り、人間として生まれたならば、それ相応の「贅沢な経験」をこそすべきだ、と語っています。

…なるほど。

 

初めてこの作品を読んだ大学3年生の私は、大きな感銘を受け、それから、芸術、ことのほか文学にのめりこんでいったものです。もしかしたら、「こどもたちと4泊5日かけて100km歩く」ことも、それの一つかも知れませんね。
このブログの読者のみなさんは、どのようにとらえていらっしゃるでしょうか…?

常総100kmでは、仕事とは「人類への奉仕だ」と考えています。社会人スタッフのみなさんは、それを実践し、学生スタッフはその姿を見、学び、来る社会人となる日に向け、先ずは心構えから学んでいます。もちろん、「職業は何ですか?」と問われれば、「教員」や「パン屋さん」、「掃除屋さん」に「保険屋さん」、「SE」に「商社マン」などさまざまありますが、そらは、社会への貢献方法だ、と考えています。

 

いまこのブログを書いている私が学生なので、教わっていることを書いているだけなので、非常に説得力に欠けてしまい申し訳ないのですが、僕らはそのような意識で、学び、社会に出ていきたいと強く願っています。

…代助とはもはや正反対ではありますが。苦笑

 

「小説」の世界に入っていく入口は人それぞれ! 好きな本、好きなことがバラバラなのですから、入口もさまざまあってしかるべきです。このような「仕事」といっただれにでも関心の持たれるテーマから読書に入っていくのも悪くはないのではないでしょうか?

 

ちなみに…この漱石の『それから』は今回とっかかりやすく「仕事」をテーマに紹介をしてみましたが…叶わぬ恋あり、芸術論あり、東京を舞台にした、現代にも通用する未解決の問題が散りばめられています。(さすが巨匠!)

 

ほんとうに一読の価値がある作品ですので、ぜひ、手に取ってみてください。